赤塚植物園4

万葉歌と植物

ノカンゾウ(わすれ草)

「わすれ草わが紐に付く香具山の ふりにし里を忘れむがため」大伴旅人

わすれ草を着物の紐につけました。香具山のある懐かしい故郷を忘れるために・・・

 

60代で太宰府に派遣された旅人の望郷の念を歌ったものです。
当時の60代と言ったらかなりの高齢ですね。太宰府に行かされたのは左遷とも、能力をかわれたのだとも言われていて、はっきりしたことはわからないのですが、いずれにしても、懐かしい故郷にもう戻れないかもしれない、という思いがよぎることはあったでしょうね・・・

 

ノカンゾウのことは前にも書きました。この花を見ると「憂さを忘れる」と言われ、「忘れ草」という名があるのです。

 

kusagasuki.hatenablog.com

 

もうオミナエシ(女郎花)が咲き始めていました。

「手に取れば袖さへにほふ女郎花 この白露に散らまく惜しも」詠み人知らず

手に取ったら、袖さえ染まりそうな女郎花がこの白露で散ってしまうのが惜しまれます。

 

夏が終わり、秋の気配が濃くなるにつれ、冷たい白露が草木に宿るようになる。
1年を72等分し、季節の変化を表す名付けをした七十二侯によると、今年は9/8が「草露白(くさのつゆしろし)」になります。

 

ススキの穂はさすがにまだでした。

「人皆は萩を秋と言ふよしわれは 尾花が末を秋とは言はむ」詠み人知らず

人は皆、萩が秋を思わせる花だと言うけれど、私はススキの穂こそ秋を感じさせてくれると言おう。

 

萩もススキも秋の七草の一つ。どちらも秋草の主役級の植物です。
どちらがより秋を感じさせるかと言ったら・・・選び難い。

萩は万葉集で最も多く歌われている花だそうです。

こちらの萩は枝を上の棚へと誘引してあるので、秋には萩のトンネルができそう。

「秋風は涼しくなりぬ馬並めて いざ野に行かな萩の花見に」

 

涼しくなったから萩を見に行こう・・・いいですね。散歩のお誘い?
しかし、自転車はなんとかなっても馬は無理。

学生の頃、サークルの合宿でシーズンオフの軽井沢でバードウォッチングもどきのことをしていたら、林の中から、りゅうとした乗馬服に身をつつみ、落ち葉の道をゆったりと馬を進めながら散歩する一団が現れ、いきなり異次元。絵のようでした。

 

園内にヤクシマハギ屋久島萩)というのもあって、花が咲いていました。風が強くて葉がひるがえっています。葉裏が少し白くて、これがまた風情があります。

ヤクシマハギは6〜7月が開花期で、花が終わって剪定するとまた9〜10月にも花が咲くそう。

ちょっと秋を先取りでしたね。

 

最後は季節の花 アジサイ

「紫陽花の八重咲くごとく弥つ代にを いませわが背子見つつ偲はむ」橘諸兄

紫陽花が八重に咲くように、あなた様も末永くお健やかでいらしてください。

 

この歌は、丹比国人真人という方のお祝いの席で詠まれた歌だそうです。
万葉集には紫陽花の歌は2首だけ。色変わりする花なので、比喩的に使えそうなのに、意外です。