今まで、バラにはさほど興味がありませんでした。
もちろん、バラ園に行って、花の香りをかいだりするのは好きでしたが、個々のバラについてはそれほど注目してきませんでした。
それが、ブログで紹介するのに、個々のバラについて調べるうち、名前の由来を知ったり、作出者の人生を垣間見たりする面白さにすっかりハマってしまいました。
そして、いつの間にか、バラの写真を撮るときに、まるでポートレイトを撮るような気分でバラと向き合うようになっていました。バラは、ただバラというだけでなく、それぞれの名前を持ち始めました。
あちこちのバラ園を見て回るようになって、「このバラは優しげでいいな・・・」と思うものが大抵、作出者がデビッド・オースチンだということにも気づきました。
デビッド・オースチンの名前は知っていたけれど、彼が作出したバラがどういう特徴を持ったバラなのか知りませんでした。
デビッド・オースチン(1926-2018)が作り出したイングリッシュ・ローズと呼ばれるバラは、オールド・ローズとモダン・ローズの良いところを合わせたもので、オールド・ローズからは、香り、優美な花姿、シュラブ樹形を。モダンローズからは多彩な花色、繰り返し咲きの性質を受け継いでいるそうです。
前置きはこの辺にして、花の姿を。
グレイス[港の見える丘公園]作出年/2001
うっとりしてしまいます。名前は「優美、品位」といった意味合いです。
その名の通りの「たおやかで、匂い立つ」」といった姿です。
オリビア・ローズ・オースチン[四季の香ローズガーデン]作出年/2014
オースチンさんのご子息(デビッド・オースチン・ジュニア)の娘さん、つまりお孫さんのお名前がついたバラです。
シャーロット・オースチン[港の見える丘公園]作出年/1993
こちらもお孫さんの名前だそう。
ご本人たちのことは全然知りませんが、オリビアは、物静かで優しい、ちょっと人見知りしそうな少女。シャーロットは社交的で快活な少女が思い浮かびます。
おじいさんから自分の名前のついたバラをもらうなんて、すてきですね〜
こちらは奥様のお名前です。奥ゆかしく、うな垂れ気味に咲くパット・オースチン。
写真でもうな垂れてはいますが、今まで見た中では、ずいぶん花茎がしっかり立って咲いているように思えました。お手入れの賜物でしょうか。
本当にすてきなアプリコットカラー。
こちらは、白とピンクが一本の木から咲いています。
こんな源平桃みたいなバラがあると知らず、驚きました。
ウィンチェスター・キャシードラル[港の見える丘公園]作出年/1988
イギリス、ハンプシャー州にあるウィンチェスター大聖堂からとった名前。ウィンチェスター大聖堂はジェイン・オースティン(「高慢と偏見」「エマ」などの著者)のお墓があるので知られています。
このバラは、ピンク色のメアリー・ローズの「枝変わり」のバラなので、こうして、時折ピンクやピンクまじりの白花が咲くのだそう。
「枝変わり」というのは、突然変異により、本来とは違う花色や枝、葉の様子などの形質が出てきた時に、その枝を接木や挿木でふやして、変化した形質を固定したものを新品種とすることです。
このように花の色が変わったり、花びらの枚数が増減したり、木立性からつる性が出たり、色々なケースがあるのだそうです。
このピンクの花はいわば「本家返り 、先祖返り」ですね。
ジュード・ジ・オブスキュア[四季の香ローズガーデン]作出年/1995
トーマス・ハーディの小説『日陰者ジュード』の主人公からとった名前。
原作を読んだことはないのですが、マイケル・ウィンターボトム監督が映画化した「日陰のふたり」を見ました。
とにかく暗くて、登場人物たちが自らの行動で不幸を招いているのに不運を嘆いているようで、イラッとした記憶があります。
もっとも見た当時、時代背景がよくわかっていなかったからなのかもしれません。
上の写真のは、急に気温が上がってしまって、太陽燦々だし、ちょっとぐったり気味になってしまったよう。
開きかけですが、昨年の秋に撮ったもの↓
繊細な色の変化が楽しめそうな美しいバラですね。
最後は、こちら
ウィンダミア[四季の香ローズガーデン]作出年/2007
名前はイギリスの湖水地方にあるウィンダミア湖にちなんだもの。
ピーター・ラビッドの作者が住んでいたニアソーリー村も近く。
ホワンと丸く愛らしい花姿。甘すぎない花色。
まさに咲きこぼれるという雰囲気がいいですね。
こうして写真を見ているだけで、なんだかバラの芳香が漂っているような錯覚が・・・