横浜イングリッシュガーデン6

気になるバラたち

横浜イングリッシュガーデンには2000種類以上のバラがあるそうです。

その中で、目をひかれたものをいくつか紹介します。

「初雁」

1994年 安田祐司氏作出

グラデーションが繊細で美しいです。端正な形。
「初雁」とは秋にその年初めて北方から渡ってくる雁のこと。日本人の美意識が感じられます。

 

「のぞみ」

1968年 小野寺透氏作出

これもまた美しいグラデーション。一重で幼なげな愛らしいバラですね。
名前の由来は戦後、満州からの引き上げの際に幼くして亡くなった作出者の姪御さんのお名前から取られたそう。平和への願いを込めて名付けられたバラです。

 

「スブニール・ド・アンネ・フランク

1960年 Hippolyte Delforge 作出(ベルギー)

アンネ・フランクを偲ぶメモリアルローズ 
「アンネの思い出」「アンネのバラ」とも。

ずいぶん華やかなので、パッと見ちょっと違和感があったのですが。
たまたまこの前に少し似た色味のバラ(次に紹介)を見たせいかも・・・

アンネというと、なんとなくピンク系を思い浮かべたのですが、オレンジに赤味の差す花姿が、少女の上気した頬を思わせるようで、逆に切ないかも・・・

この花はアンネの父、オットー・フランク氏に捧げられたもの。やはり平和への祈りが込められたバラです。

 

「プレイボーイ」

1976年 Alexander M. Cocker 作出(イギリス)

花びらはそんなに多くないけれど、華やかで情熱的な雰囲気のバラ。
波打つ花びらと色変わりが、移り気で華麗な「プレイボーイ」を思わせる?

 

「マルキーズ・ドゥ・メルトイユ」

2011年 岩下篤也氏作出

ふりふりがすごくて目を引きました。

この名前は、1782年にフランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロによって書かれた、175通の手紙で構成された小説「危険な関係」の作中人物の名前です。

危険な関係」といえば、さまざまな国で時代や場所の設定を変えたりして、映画、ドラマ、舞台化されていますね。

メルトイユ侯爵夫人は愛人が自分を裏切って若い女と結婚すると聞いて、以前から関係のあったヴァルモント子爵にその若い女を誘惑するように持ちかける・・・

このバラは人間の心理を巧みに操る「悪女」の名前がついているのですね。
そういえば、「危険な関係」は映画やドラマは見たけれど、原作は未読。読んでみようかな。

 

「フェルゼン伯爵/シンギン・ザ・ブルース」

2008年 Jacques Mouchotte 作出(フランス)

フェルゼン伯爵は、王妃マリー・アントワネットの心の支えとなった人物。

京成バラ園芸が、2012年に同社から発売した「ベルサイユのばら(真紅)」のヒットを受けて、シリーズ化したバラの一つです。

ベルサイユのばら漫画原作者池田理代子氏監修のもとフランスのバラ育種の名門メイアン社で作られたバラの中から、五人の登場人物の名を冠するバラが選ばれました。

他に「オスカル フランソワ(白)」「王妃アントワネット(濃ローズピンク)」「アンドレ グランディエ(ライトイエロー)」「ロザリー ラ モリエール(桜ピンク)」

他の花たちもダブルネームなのかはよくわかりません。
上の写真ではピンク味が強く出ていますが、花色はラベンダー紫となっています。

 

プリンセス・アレキサンドラ・オブ・ケント

2007年 David Austin 作出(イギリス)

エリザベス2世のいとこで、バラ愛好家でもあるアレキサンドラ女王(1936.12.25-)にちなんで名付けらました。
女王は1961年に来日。第二次世界大戦後に日本を訪れた最初の英国王族で、西側先進国で初めて国賓として訪日をされたそうです。

 

ガートルード・ジーキル

1986年 David Austin 作出

ガートルード・ジーキル(1843-1932)はイギリスの園芸家、ガーデン・デザイナー、画家、工芸家、著述家。

画家としてスタートしたのち、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動に共鳴して、美術工芸に携わるようになるが、目を患ってからガーデニング、庭園デザインの道へ進む。イギリスのガーデンスタイルに多大な影響を与えた人物のようです。

 

「シェアリング・ア・ハピネス」

2010年 河合伸志氏作出

このバラは群馬県館林市にあった東武・トレジャーガーデン(2021.6.14閉園)のシンボル・ローズ。
ガーデンの近くの茂林寺が「分福茶釜」の発祥の地で、「分福=幸福を皆に分け与える」という意味合いで、名付けられたそうです。
ピンクの花びらに白の覆輪と白い筋が入るハンドペイント、花びらの裏は白色。
砂糖菓子のような可愛らしさですね。

東武トレジャーガーデン、一度行ってみたかったのに、閉園になってしまったのですね・・・

 

ショコラティエ

2018年 河合伸志氏作出

小さな花を一口サイズのチョコレートに見立て、チョコレート菓子職人(ショコラティエ)と名付けたそうです。

なんともいい色。甘いオレンジピンクに黄色い蕊、おいしそうです。

今までいくつか河合伸志氏のバラを紹介してきましたが、河合氏は横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーを務め、園内のデザインディレクションを行う傍ら、バラの新品種の育種や庭園プランニング、デザイン、管理指導などを行っておられるそうです。

 

ホットチョコレート

1986年 Nola M. Simpson(ニュージーランド

朱色から茶を含んだ赤。なんともいえないシックで大人っぽい色。

ショコラティエと隣合わせで板塀の所に植栽されていました。ショコラティエホットチョコレート、遊び心がありますね。

 

去年、光が丘の四季の香ローズガーデンで出会った秋バラの名前の由来を調べてから、バラの名付け、作出者のストーリーを知るのが楽しくなりました。
バラほど人々に思いを込められて名付けられる植物はないのでは?と感じます。

横浜イングリッシュガーデンのバラには花姿が魅力的なバラがたくさんありますが、短い時間で目についた、主に名前に由緒のありそうなバラを撮って、紹介しました。

長々と続けてきましたが、これで横浜イングリッシュガーデンのリポートは終わりです。

ですが、この日はこの後さらにバラの世界にどっぷり浸かったのです。
そのリポートはまた後日。

 

最後に横浜イングリッシュガーデンのバラ園の出口を出たすぐ右手のコーナーの植栽を。「バラ園」という甘やかでロマンチックなイメージをぎゅっと凝縮したような植栽です。