ロバート・フォーチュンとチャノキ

今日はお茶の話。
コーヒー党か紅茶党かといったら、断然紅茶党です。

紅茶に限らず、ハーブティーとか黒豆茶ルイボスティーなど、家にはいつも何種類かお茶があって、お茶飲みです。
特に詳しくもないし、こだわりもないけれど、紀伊國屋とか成城石井、カルディなんかでお茶の棚を見ているだけで楽しくなる。なんだかロマンを感じるんですよね。お茶ってすてきなパッケージが多いし。


フォートナム&メイソンのアールグレイには、ちょっと思い入れがあって、深緑の時計の絵柄のついたパッケージや缶を見ると、若かったあの頃・・・と回想モードに入ることもあったのですが、パッケージ、変わってしまったんですよね。
スモーキーアールグレイの古風な香りにあの深緑があっていたのにな・・・味は同じでもなんだか物足りません。

 

ところで、紅茶と言ったら、やはりイギリスですよね?

イギリスを「紅茶の国」にしたのが、19世紀のプラント・ハンター、ロバート・フォーチュン(1812~1880)です。

 

フォーチュンは、中国から茶の苗木、種を大量にインドに移送、茶職人や茶を輸送する時に必要な、密閉した鉛の箱を作る職人までインドに送りました。
インドで茶の栽培、生産が盛んに行われるようになって、中国による茶の独占が終わり、やがてインド産の茶は質、量ともに中国産を上回っていく。

インドで大量に茶が生産されたことで、茶の価格も下がって、一般家庭にも紅茶が普及していきました。

 

このロバート・フォーチュンが中国から、いかにして茶を入手したかを書いた本があります。

サラ・ローズ著 築地誠子訳『紅茶スパイ 英国人プラント・ハンター中国を行く』原書房

 

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当時外国人は中国の奥地へ入ることは許されていませんでした。しかし、フォーチュンは、中国服を身にまとい、髪を剃り、弁髪をつけ、中国人に変装して奥地に潜入します。

雇った中国人たちの振る舞いに手こずり、強盗に襲われたり、危険な旅でしたが、チャノキや種、茶の製法も入手します。
インディー・ジョーンズばりの冒険譚です。

 

当時、紅茶と緑茶は別の木から作られていると思われていましたが、同種の木から作られ、その製法が違うのだということを突き止めたのもフォーチュンです。
今で言うなら、大変な産業スパイですね。

 

プラント・ハンターというと、なんだかロマンを感じるのですが、なかなかに甘くない。
強靭な体力と精神力、さらには交渉力や人を見る目など、コミュニケーション能力も高くないとミッションを遂げられない。

植物を移送するウォードの箱の使い方における発見は、観察力や発想の自由さなども必要でした。

 

どんな人物だったのでしょう? 
彼自身が何冊か本を書いているのですが、いくつかのミッション(例えば、アヘンの元になる中国のケシ栽培の調査)については触れておらず、晩年の暮らしについても知られていません。
死後に妻が手紙その他、夫であるフォーチュンの私物を全て残らず焼却してしまったそうです。
遺言なのか、他に理由があったのかはわからず。謎めいていますね。

 

チャノキは大きく分けると中国種とアッサム種の2種があり、さらに2種が交配したハイブリッド種があります。

中国種は寒さに強く、寒冷地に適応して葉は小さく厚みがある。ダージリンティーは、主に中国種。

アッサム茶はインドのアッサム地方で発見され、寒さに弱く、標高の低い場所に適しています。葉は大きく薄め。

 

小石川植物園には、チャノキ以外に、アッサム茶、唐茶、紅花茶の木もありました。

 

チャノキ

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アッサム茶

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トウチャ(唐茶)

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トウチャはチャノキの変種と考えられていて、苦味が強く、あまり美味しくないそうです。原産地は中国の雲南地方とされています。

 

花茶は薄いピンクの花を咲かせるチャノキで主に観賞用。

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お茶の木というと日本の茶畑を思い浮かべるので、さほど背の高くなる木と思いませんが、自然に育つと10メートルくらいになるそうです。

 

都内でも小規模ですが、茶畑がみられます。

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こちら、皇居の東御苑の茶畑。
観賞用で茶摘みはしないと最近の案内にはありました。

 

人から聞いた話で、真偽の程は定かではありませんが、以前は静岡のあたりからボランティアの方たちが出向いて、茶摘みをし、その際には菊の御紋の入ったタバコなどが下賜されたということです。
健康志向の高まりもあり、今は恩賜のタバコも廃止されています。

 

新幹線で静岡近辺を通る時に美しい茶畑が見られますが、山の斜面や台地などでの栽培で、大型の機械を入れられず、跡継ぎ不足や高齢化が進み、茶畑は減っているようです。
棚田とか茶畑の美しい景観が失われて行ってしまうのですね・・・

 

日本で栽培される茶樹の75%程度が「やぶきた」だそうですが、このやぶきたは、種で増やされるのでなく、挿木によるので、いわばクローンです。

茶は同じ品種同士を受粉させても種子ができにくく、他品種との掛け合わせでないと種が取れません。またそのようにしてとった種から育てた場合、親の木と同じ性質にならないのです。

挿木なら、ほぼ同じ性質を持った木となるため、茶の品質を均一に保ちやすくなります。

やぶきたの原木は静岡県の天然記念物とされ、100年以上の樹齢があるそうです。

 

ロバート・フォーチュンは、来日もしていて、植物採集の話や幕末の日本の様子を本にまとめました。これがとても興味深く面白いので、いずれまたご紹介します。