イギリス スカイ島 4

f:id:kusagasuki:20210228015013j:plain

 

ドライブをしたその夜、夕食をホテルで食べた後、ラウンジに移り、お茶などを飲んでいた。

ここでは、皆思い思いのことをして過ごす。四人のおばあさんの一人は、傷んだ聖書の背を繕っていた。また別の旅行客で、おばあさん達と同じ年頃の女性がいたが、彼女は淡い色の細い毛糸で、孫のためにケープか何かを編んでいた。

 

私たちは特に何をするでもなく話をしていたと思うが、おばあさん達よりもう少し若い年代の女性が、質問してきた。

どこからきたのか? とか、何日ぐらいの旅なのか? とか。私たちはスカイ島には、2泊の予定だったので、そう告げると、なんて短い! と驚くので、仕事が忙しいので長い休みを取れない、というようなことを答えた。すると、その人はスイス人だったが、日本人はそうよね、と含みのある態度で、さらに何か決めつけるような質問をされたのだが、私たちの英語力では、まともに答えられなかった。

 

当時、栄養ドリンク剤、リゲインの「24時間戦えますか?」というCMが流れていたが、日本人=会社人間というイメージや、バブル期の日本人の振る舞いなどが海外でも報道されていたから、苦々しい思いがあったのかもしれない。

 

私たちが、答えあぐねていると、日本人には信仰がないからと言い、何か批判的なことを早口で喋り出した。すると私に花の名前を教えてくれたおばあさんが、私たちを擁護する様子で、対抗して話しだし、その後かなり激しい議論になっていった。

 

私たちには、自分たちのことを言われているのか、それとも何かさらに別のことで議論になっているのかもわからず、居心地の悪い思いでただ黙ってそこにいるしかなかったのだが、四人のおばあさんの中の別の一人が私たちのところにきて、さあ、もう部屋に戻りなさいと促してくれた。

 

翌朝、私たちを擁護して議論してくれたおばあさんが、申し訳なさそうに、昨夜は気の毒なことをした、と声をかけてくれた。

むしろ、私たちのために、闘ってくれて、ありがとうという気持ちだったけれど、何と言えばいいのかわからず、ただ、大丈夫というふうに首を振るくらいしかできなかった。

 

その日は、私たちの移動日だったのだが、天気が荒れ模様になり、船が欠航になってしまった。それまで使っていた部屋は他の客が入る、他に空いている部屋はない、ということだったのだが、無理を言って、その宿の家族か誰かが使っていた部屋をあけてもらい、もう一泊した。

そんなこともあって、おばあさん達と別れの挨拶をしたのがこの日の朝だったのか、それとも実際に立つ日だったのか記憶が定かではないが、私が摘んでもらった花をスケッチした絵をあげて、おばあさん達からは、マーガレットの花の絵と聖句の書いてあるしおりをもらった。

 

30年経った今、まだお元気にしていらっしゃる方が果たしておられるだろうか?

私たちが折に触れ、彼女達を思い出すように、彼女達の旅の思い出に私たちは多少なりとも彩りを添えられただろうか?

 

スカイ島滞在中、とうとう一度も青空を見なかった。

いつか、晴れた日にスカイ島を訪ね、彼女達が素晴らしかったわよ、と言っていた、山の景色も見てみたい。

けれど、あの時の彼女達の年齢に近くなった今、もうあのような出会いはないだろう。

 

"We are happy."  と答えたあの日の朝の自分を少し、ほめてやりたい。

 

f:id:kusagasuki:20210228015857j:plain