イギリス スカイ島 2

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スカイ島へは現在スカイブリッジができ、車でも行けるようになったが、当時は船でしか行けなかった。

インヴァネスからスカイ島に渡る船着場のあるカイル・オブ・ロハルシュまで3時間ほどかかっただろうか、かなりの距離を電車で走った。

 

先輩とは、大まかに行先の相談をして、行程の電車の時間や乗り換えについては、私が赤い表紙のトーマス・クックの時刻表を使って、詰めることにしていた。

インヴァネスからカイル・オブ・ロハルシュまでの電車は一日に数本しかなかった。昼食後あたりに、頃合いの時刻の電車があったので、それに乗ることに決めた。

ところが、駅に行ってみると掲示板にその電車の表示がない。時刻表には確かにあったはずと、慌てて取り出して見ると、その時刻の脇に小さな印があり、欄外に細かい字で、7月1日より運行とある。夏期の臨時列車だったのだ。

 

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愕然としたが、他に手立てもなく、その後に1本だけあった最終電車に乗る。この時は、スカイ島で泊まる宿は、インヴァネスのインフォメーションセンターで、すでに取ってはあったが、カイル・オブ・ロハルシュ駅到着は夜の9時頃。スカイ島に渡る船にうまく乗り継げるのか、とても不安だった。

 

日本でのように、夕方から夜に向かってだんだんと車窓の外が暗くなって行くのだったら、さらに不安は強まっていっただろう。しかし、この時期、イギリスの夜は明るい。曇っているとはいえ、昼間のような明るさだったから、私の不安も少しは紛れたように思う。

 

電車の最後の方の行程は、ずっと海岸線を走っていく。鉛色の海、浜の小石には、藻がこびりついて、荒涼としていた。しかし薄ら日が射したかと思うと雨がパラつく天気で、海側にも陸側にも虹が複数かかって、まるで夢の中を電車が行くようだった。

 

カイル・オブ・ロハルシュ駅について、船には乗り継げたが、スカイ島の船着場についた頃には、さすがにあたりは暗くなっていた。

船の同乗者達は、目的地へと足早に去っていく。心細さがつのる。

少し離れたところからこちらに向かってきた男性が宿から車で私たちを迎えに来てくれた人だとわかった時は、本当にほっとした。

 

宿について安心したものの、夕食の提供はすでに終了していた。あたりにはスーパーなどもないので、先輩には嫌がられたが、万一のためにと持ってきたカップヌードルを作って食べた。

湯を沸かそうと、水道の蛇口を捻ると、茶色い水が出てきて、赤錆かとギョッとしたが、ここはウィスキーで有名な地、泥炭を通って出てくる水は茶褐色をしているのだった。バスタブにはった、薄い泥水のようにも見える湯に浸かるのには慣れなかったが、今思えば、あれは名水とも言える、おいしい水だったはずだ。

 

 

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定番朝食(これは別の旅で))

 翌朝、朝食をとりに食堂へ行く。初めての個人旅行で、周囲は白人だけ。勝手もわからず緊張した。

朝食は、イギリスの朝の定番、ベイクドビーンズと卵、ベーコンかウィンナーといったものだったが、パンがトーストスタンドで供されるのが物珍しかった。

金属でできた皿立てを小さくしたようなもので、皿の代わりに、三角に切った薄いトーストが何枚か立っている。

当時は何の役に立つのかわからず、単なるカッコつけか? パンが冷めてしまうのに、と思ったが、後になって、パンを直接皿に置いて湯気で湿ってしまうのを避けるのと、バターが溶けて浸み込まないよう、少し冷ますか、冷えてからバターを塗って食べるためだと知った。熱々のトーストにバターをジュワッと溶かして食べるのがおいしいと思うのだが・・・

 

その朝食の席で、先輩はなぜか席を外していたので、私一人で座っていたのだが、年配の白人女性がそばに立ち、話しかけてきた。

英語はろくにできなかったが、「よかったら、私たちと一緒に車で島をドライブしないか」と誘ってくれているのだとわかった。

びっくりしたが、その時、断るという選択肢は浮かばず、とっさに "Thank you.

We are happy." と答えていた。